乳頭温泉郷鶴の湯温泉
鶴の湯温泉は秋田新幹線・田沢湖駅から北に直線距離で約13km、車で30分ほどの所にある。この鶴の湯は、乳頭山(標高1478m)の西側斜面に点在する七つの一軒宿の温泉、すなわち孫六、黒湯、蟹場、乳頭、妙乃湯、大釜とを併せた乳頭温泉郷の一つ。
「温泉を保護しその利用の適正を図り、公共の福祉の増進に寄与すること」が温泉法制定の目的とされているが、この乳頭温泉郷は「温泉の保護」とその「利用の適正」とを両立・実現させ続けている数少ない温泉地の一つとして学ぶべき点は多い。
鶴の湯の歴史は古い。伝承の由来記によると寛永15年(1638年)5月に秋田藩主・佐竹義隆公が湯治に訪れた記録があるという。湯宿の始まりは元禄14年(1701)。敷地内に6ケ所の源泉があり、湧出時は無色透明であるが、時間の経過につれて次第に白濁する。6源泉併せての温泉量は280ℓ/分。この量を、客一人当たりの給湯量・毎分1リットルの目安に当てはめると、宿の定員は280人にもなるが、実際はその4分の1ほどに抑えられている。
乳頭山の山裾から湧出している鶴の湯の源泉は、歴とした火山性温泉である。有史以来の噴火の記録はなくても、乳頭山は第四紀の火山なのだ。だから、私はTVでの放映やガイドブックに載る写真を見て、鶴の湯は草津のような酸性の温泉だとばかり思っていた。ところが実際は中性である。浴室に掲示された白湯、黒湯、中の湯、滝の湯、鶴の湯などの源泉の分析書ではpH6.6~7.1となっていた。泉質は成分の分量で多少の違いはあるが、含硫黄ーナトリウムー塩化物・炭酸水素塩泉(旧泉質名・含硫黄・重曹ー食塩泉)が主体となっている。温泉には硫酸イオンが含まれているが、泉質名の副成分として硫酸塩が付かないほど、炭酸水素塩イオンの溶存量が勝り、ガス成分の二酸化炭素も多い。恐らく温泉の入り心地の良さは、適度な温度とこの泉質によるのだろう。活火山の中腹にこの種の泉質の温泉が湧出する例は多い。箱根温泉郷がそうである。
基本情報
- 都道府県
- 秋田
- 温泉名
- 乳頭温泉郷
- 施設名
- 鶴の湯温泉
- 泉質
- 含硫黄ーナトリウム・カルシウムー塩化物・炭酸水素塩泉(旧泉質名 含硫黄・重炭酸土類ー食塩泉)
- 住所
- 〒014-1204 秋田県仙北市田沢湖田沢先達沢国有林50
- 電話
- 0187-46-2139
アクセス
- アクセス方法
- 車:東北自動車道盛岡ICから国道46号、341号線経由で90分。
電車:JR秋田新幹線田沢湖駅下車、路線バス乳頭線乗車、アルパこまくさ下車、バス停より送迎あり(要予約)。
調査表データ
- 温泉の歴史
- 寛永15年(1638年)秋田藩主・佐竹義隆公が来湯。6ケ所の源泉があり、無色透明であるが、43℃前後で白濁する。温泉量は280ℓ/分、内湯が4ケ所、露天風呂2ケ所。
- 源泉
- 【源泉名】 鶴の湯温泉(白湯)
【源泉所有者】 佐藤 和志(温泉台帳番号)-
【湧出地】 秋田県仙北郡田沢湖町田沢字先達沢国有林50林班ハ小班
【源泉の種類】 自然湧出
【井孔の深さ】 - - 源泉湧出現状と引湯方法
- 【湧出状況】 自然湧出
【動力およびポンプの種類・型式】 ポンプの設置なし
【温度】 58.5℃(測定年月日 平成15年1月14日)
【湧出量】 60ℓ/分(自噴量)
【貯湯タンク】 無
【引湯方法】 自然落差で30m引湯
【温泉の温度の調節方法】 木の樋で流して外気で温度を下げる - 温泉分析書および泉質名
【温泉分析書の分析年月日】平成15年1月14日
【分析機関名/分析者】 株式会社 秋田県分析化学センター 鈴木清晴
【温度】58.5℃(気温 -1℃)
【湧出量】 60ℓ/分
【湧出地におけるpH】 6.9
【試験室におけるpH】 6.6
【蒸発残留物】 2300g/kg
【密度】 1.0004(20℃)
【知覚的試験】 無色透明、微弱な硫化水素臭と渋味があり中性である
【溶存物質(ガス性のものを除く)】 2647.6g/kg
【成分総計】 2809.g/kg
【導電率(25℃)】 - μS/cm
【療養泉の泉質名】 含硫黄ーナトリウム・カルシウムー塩化物・炭酸水素塩泉(旧泉質名 含硫黄・重炭酸土類ー食塩泉)
【液性・浸透圧・泉温による分類】 低張性中性高温泉
陽イオン(試料1kg中の分量) 陰イオン(試料1kg中の分量) イオン成分 (mg) イオン成分 (mg) ナトリウムイオン 584.8 フッ素イオン 1.9 カリウムイオン 21 塩素イオン 657.7 アンモニウムイオン 2.7 硫化水素イオン 3.9 マグネシウムイオン 43 チオ硫酸イオン 6.3 カルシウムイオン 149.9 硫酸イオン 269.9 炭酸水素 783.7 陽イオン 計 802.5 陰イオン 計 1725 遊離成分 (mg) 溶存ガス成分 (mg) メタケイ酸 80.6 二酸化炭素 155.9 メタホウ酸 34.5 硫化水素 5.5 非解離成分 計 115.1 溶存ガス成分 計 161.4 その他微量成分の記載は省略した。
- 定員および温泉利用料
- 【宿泊定員数】 65人
【客室数】 35部屋
(源泉湯宿基準の定員数算出法:1人/4畳(主客室))
【温泉総利用量】 280ℓ/分(源泉6ヶ所分)
【定員1人当たりの温泉量】 4.3ℓ/分/人 - 給湯方式等の利用状況および浴場の状況
【給湯および利用方法】 源泉掛け流し
【浴場の数】 男湯:4 女湯:4 露天風呂:3 家族風呂 -
浴場種別 男 湯 女 湯 露天風呂 名称 白湯 白湯 鶴の湯 浴槽面積(㎡) 5 5 54 浴槽体積(m³) 2.9 2.9 29 給湯量(ℓ/分) 35 35 80 給湯温度(℃) 50 50 61.2 換水回数(回/日) 1/3 1/3 1/7 【加水(冷却用)・加熱等の有無】 なし
【浴槽水の循環利用・ろ過・滅菌等の有無】 なし
【浴槽の清掃について】 1回/日から1回/3日、露天風呂は1回/7日
- 備考
- 【調査表記入年月日】 平成16年11月9日