福地温泉山里のいおり 草円
福地温泉には、源泉湯宿を守る会の会員宿が3軒あるが、今回は「山里のいおり・草円」。
草円の新規開業は平成17年。旅館としては未だ新しいが、その前身の「まつ屋」の創業は福地温泉草創期の昭和50年。新しい館内には、これまでの数十年間を福地温泉の発展に尽くしてきた自負に加えて、今まで守り続けてきた古くからの生活文化が新たな装いを得て、そこかしこに漲っている。その館内は新しいといっても、建物自体は築100年にも及ぶ古民家を移築したものである。
さて、草円の温泉のことである。まだ「まつ屋」の頃は、地域共有の源泉を引湯して利用していたが、新たに平成15年に敷地内に井孔を掘削して自己所有の源泉が確保できた。岐阜県知事による許可揚湯量は68ℓ分。深さ301.5m、3.7kwの水中ポンプによる揚湯だから上々の仕上がりである。井孔の掘削終了時の平成15年3月の温泉分析では、泉質は単純温泉だった。蒸発残留物711mg/kg、溶存物質(ガス性のものを除く)996.4mg/kg。あと3.6mg/kg溶存量が増えればナトリウムー炭酸水素塩泉に分類される。鉄(Ⅱ)イオンが3.4mg/kg含まれている。
現在、草円の浴室には平成18年12月分析の温泉分析書が掲げられている。泉質はナトリウムー炭酸水素塩泉。蒸発残留物615mg/kg、溶存物質(ガス性のものを除く)1.028g/kg、鉄(Ⅱ)イオン4.4mg/kgである。旅館の定員は30人程だから、温泉の利用面でも正に適正。源泉湯宿の究極の課題の一つが源泉の保全にある。温泉成分の今後の推移に注目していきたい。
基本情報
- 都道府県
- 岐阜
- 温泉名
- 福地温泉
- 施設名
- 山里のいおり 草円
- 泉質
- ナトリウムー炭酸水素塩泉(旧泉質名 重曹泉)
- 住所
- 〒506-1434 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷福地831番地
- 電話
- 0578-89-1116
アクセス
- アクセス方法
- 長野道松本ICから車で80分、中部縦貫自動車道高山ICより車で60分、バスタ新宿より飛騨高山行き高速バス平湯温泉乗り換え新穂高行き福地ゆりみ坂下車徒歩3分、JR高山駅より新穂高行きバスで70分福地ゆりみ坂下車徒歩3分
調査表データ
- 温泉の歴史
- 奥飛騨温泉郷・福地温泉で昭和50年から、「お宿まつ屋」として旅館を始めた。その際、共有源泉を引湯して営業してきたが、平成15年春に敷地内にボーリングして源泉 を確保し、新たに旅館を建築して平成17年5月に新規開業。
- 源泉
- 【源泉名】 福の湯
【源泉所有者】 自己所有(坂下修二、他)(温泉台帳番号)福地第30号
【湧出地】 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷福地字アリタ897-1
【源泉の種類】 掘削井
【井孔の深さ】 301.5m
【静水位】 36m(平成15年3月11日) - 源泉湧出現状と引湯方法
- 【湧出状況】 動力揚湯
【動力およびポンプの種類・型式】 3.7kwグルンドフォスポンプ(株)製SP5A-23
【温度】 58.6℃(測定年月日 平成18年12月15日)
【湧出量】 68ℓ/分
【貯湯タンク】 有(保温材加工)3リッポウメートル
【引湯方法】 引湯距離90m、自然落差
【温泉の温度の調節方法】 熱交換器で40℃位に下げ、直接浴槽に入れる源泉と混ぜて利用 - 温泉分析書および泉質名
【温泉分析書の分析年月日】平成18年12月15日
【分析機関名/分析者】(株)神岡衛生社 辻井伸明
【温度】 58.6℃(気温5.8℃)
【湧出量】 68ℓ/分
【湧出地におけるpH】 7.2
【試験室におけるpH】 7.26
【蒸発残留物】615mg/kg
【密度】 0.9997(20℃)
【知覚的試験】 無色透明、かすかに鉄、炭酸味、微硫黄臭を有する
【溶存物質(ガス性のものを除く)】 1.028g/kg
【成分総計】 1.072g/kg
【導電率(24.9℃)】 73.2 mS/m
【療養泉の泉質名】 ナトリウムー炭酸水素塩泉(旧泉質名 重曹泉)
【液性等による分類】 低張性中性高温泉
陽イオン(試料1kg中の分量) 陰イオン(試料1kg中の分量) イオン成分 (mg) イオン成分 (mg) ナトリウムイオン 174.0 フッ素イオン 4.7 カリウムイオン 19.3 塩素イオン 22.6 マグネシウムイオン 3.5 硫化水素イオン 0.1 カルシウムイオン 37.8 硫酸イオン 14.6 アルミニウムイオン 0.2 炭酸水素イオン 611.4 鉄(II)イオン 4.4 陽イオン 計 240.8 陰イオン 計 653.4 遊離成分 (mg) 溶存ガス成分 (mg) メタケイ酸 133.4 二酸化炭素 <0.1 メタホウ酸 133.4 硫化水素 <0.1 非解離成分 計 133.4 溶存ガス成分 計 44.6 その他微量成分の記載は省略した。
- 定員および温泉利用料
- 【宿泊定員数】 29人
【客室数】 15部屋(源泉湯宿基準の定員数算出法:1人/4畳(主客室))
【温泉総利用量】 約40ℓ/分
【定員1人当たりの温泉量】 約1.5ℓ/分/人 - 給湯方式等の利用状況および浴場の状況
【給湯および利用方法】 源泉掛け流し
【浴場の数】 男湯:1 女湯:1
浴場種別 男 湯 女 湯 名称 浴槽面積(㎡) 8.64 8.64 浴槽体積(m³) 4.2 4.2 給湯量(ℓ/分) 20 20 給湯温度(℃) 45 45 換水回数(回/日) 1 1 【加水(冷却用)・加熱等の有無】 なし
【浴槽水の循環利用・ろ過・滅菌等の有無】 なし
【浴槽の清掃について】 1日~2日に1回換水、換水時に清掃。
- 備考
- 【調査表記入年月日】 平成16年11月24日(但し、分析表は平成18年12月の再分析結果)