新平湯温泉藤屋

風の噂に一人来て湯の香恋しい奥飛騨路…」と歌う奥飛騨慕情(竜鉄也作詩・作曲)は演歌の大ヒット曲、その歌碑が新平湯温泉に建っている。この新平湯温泉は、蒲田川沿いの新穂高および栃尾温泉と、平湯川沿いの福地および平湯温泉を合わせた五つで奥飛騨温泉郷を成していて、噴煙活動を続ける焼岳(2455m)の西方5~6kmの麓に位置している。新平湯と呼ぶことから、さぞかし新しい温泉地かと思いきや開湯伝説では太古の出雲の民の東漸まで時代は遡り、かつては一重ケ根温泉と称していたという。
平湯温泉から平湯川に沿って走る国道471号線を北上すると、福地温泉への入口を過ぎた辺りから蒲田川に掛かる宝橋までの3km程の間、道路に沿って殆んど切れ間がないほどに旅館や民宿などが建ち並んでいる。温泉地の規模は奥飛騨温泉郷でも、平湯温泉と一、二を争うほどで温泉の湧出量も多い。利用源泉・未利用源泉を合わせた源泉総数39、その1分当たりの湧出量は自噴2335リットル、動力揚湯6887ℓ(平成15年調べ)、民宿を含めた宿泊施設数はおよそ50軒。
新平湯温泉のほぼ中央付近に建つ藤屋は築200年という古民家の風格と総檜作りの和室もさることながら、ロビーで目についたのが壁に飾られた囲炉裏を囲む3世代の家族の写真。囲炉裏の火の温かさと家族ぐるみのもてなしが、この宿の原点になっている。
新平湯温泉は活火山・焼岳の麓ならではで、湧出する温泉の泉質は多様である。観光パンフレットによると単純温泉、二酸化炭素泉(炭酸泉)、ナトリウムー塩化物・炭酸水素塩泉(含里曹食塩泉)、硫黄泉などが湧出するという。藤屋では共有源泉の一重ヶ根温泉1号泉が使われているが、泉温は130℃で湧出量は300ℓ/分である。湯量の安定供給のための貯湯タンクを利用して温度が調節され、三つの浴槽に注がれている。内湯の浴槽は総檜造りで大小の二つがある。

基本情報

都道府県
岐阜
温泉名
新平湯温泉
施設名
藤屋
泉質
ナトリウム—塩化物・炭酸水素塩泉
住所
〒506-1432 岐阜県高山市奥飛騨温泉郷一重ケ根1757-1
電話
0578-89-2714

アクセス

アクセス方法
長野道松本ICよりR158~R471 約70km、約60分。中部縦貫道高山ICよりR158~R471約50km、約50分。

・東京
車以外:松本駅よりバスで「平湯バスターミナル」下車、新穂高行バス乗換
車:中央道岡谷JCTより長野道へ~松本IC~国道158号線で平湯へ、471号線で新平湯へ

・大阪、名古屋
車以外:JR高山駅より新穂高行きバス約60分「古屋ヶ根:HO46」下車
車:名神高速一宮JCTから東海北陸自動車道へ~高山IC~国道158号線で平湯へ、471号線で新平湯へ

調査表データ

温泉の歴史
もともと湯治場であった昭和40年代にボーリングによる温泉開発の結果、湯量豊富な温泉郷となった。
源泉
【源泉名】一菫ケ根温泉1号泉
【源泉所有者】共有
【湧出地】岐阜県高山市奥飛騨温泉郷一重ケ根字マセドウ2286-1
【源泉の種類】掘削井
【井孔の深さ】300m
【静水位】86m(平成20年8月12日測定)
源泉湧出現状と引湯方法
【湧出状況】掘削自噴(自噴開始時にポンプを利用)
【動力およびポンプの穂類・型式】
【貯湯タンク】あり
【温度】130℃(平成20年8月12日測定)
【湧出量】約300ℓ/分
【引湯距離】600m
【引湯方法】自然落差
【温泉の温度の調節方法】低温泉と混合している
温泉分析書および泉質名

【源泉名】一重ケ根温泉1号泉
【温泉分析書の分析年月日】平成20年8月12日
【分析機関名/分析者】(株)神岡衛生社/辻井伸明
【温度】130℃(気温31.0℃)
【湧出量】 約300ℓ
【蒸発残留物】1798mg/kg
【湧出地におけるpH】 8.32
【試験室におけるpH】 8.80
【密度】 1.001
【溶存物質(ガス性のものを除く)】1.672g/kg
【成分総計】1.672mg/kg
【知覚的試験】(湧出地)無色透明・無味、弱硫黄臭
【療養泉の泉質名】 ナトリウム—塩化物・炭酸水素塩泉
【液性等による分類】低張性一弱、アルカリ性一高温泉

陽イオン(試料1kg中の分量) 陰イオン(試料1kg中の分量)
イオン成分 (mg) イオン成分 (mg)
ナトリウムイオン 471.6 フッ素イオン 4.9
カリウムイオン 74.4 塩素イオン 371.9
カルシウムイオン 0.8 硫化水素イオン 0.4
マグネシウムイオン 0.6 硫酸イオン 34.1
アルミニウムイオン 0.3 炭酸水素イオン 433.2
マンガンイオン 0.1 チオ硫酸イオン 2.8
鉄(II)イオン 13.0 炭酸イオン 72.0
陽イオン 計 560.8 陰イオン 計 919.3
遊離成分 (mg) 溶存ガス成分 (mg)
メタケイ酸 155 二酸化炭素
メタホウ酸 537.2 硫化水素
非解離成分 計 192.3 溶存ガス成分 計

その他微量成分の記載は省略した。

定員および温泉利用料
【宿泊定員数】20人
【客室数】7部屋(源泉湯宿基準の定員数算出法:1人/4畳(主客室))
【温泉総利用量】100ℓ/分
【定員1人当たりの温泉量】5ℓ/分/人
給湯方式等の利用状況および浴場の状況

【給湯および利用方法】 共有源泉を貯湯タンクで集湯し給湯
【浴場の数】 男湯:1 女湯:1 露天風呂: 1

浴場種別 男 湯 女 湯 露天風呂
名称
浴槽面積(㎡) 12 12 25
浴槽体積(m³) 8.0 8.0 18.0
給湯量(ℓ/分) 100 100 100
給湯温度(℃) 42 42 42
換水回数(回/日) 1 1 1

【加水(冷却用)・加熱等の有無】 なし
【浴槽水の循環利用・ろ過・滅菌等の有無】 なし
【浴槽の清掃について】 随時

備考
【調査表記入年月日】平成26年8月20日